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えん罪はある

2009年01月07日

えん罪はある

 

差し障りのない範囲で、私の刑事弁護で印象に残っているものを記録します。この世にえん罪はあるという体験です。
新米弁護士当時、登録後2年目の時、ある刑事事件の国選弁護人を担当しました。今は、国選弁護はあまりやらなくなったのですが(それでも、年に2件程度はしていますが)、当時は、よくやっていました。

 

被告人は、同種の犯罪で過去多くの前科がありました。今回も、同様の事件で起訴されました。接見したところ、被告人は争う意思はありませんでした。起訴状をよく見ると「追起訴予定」とありましたが、ふたりともあまり気にとめませんでした、追起訴がありました。

 

つまり、二つの犯罪の罪を問われることになります。これも、同様の事件でした。ただ、犯行場所が違います。被告人は、この追起訴された事件については、全く、納得いかないとのことでした。ただ、被告人や事件の相手となっている人物の調書は、全くきれいにとれていて、疑問の余地はない感がありました。私は、被告人に、あまい弁解は通用しないと思う、と伝えました。彼は、烈火のごとく怒りました。

 

実は、現場には第三の人物が存在し、被告人も相手の人物も、第三の人物については、あまりしゃべりたくなく、警察も聞きませんから、これが現場から欠落した形で起訴されたのです。ですから、この犯行は、被告人が主体となったのでした。客観的な物証なく、関係者の供述だけで起訴する危険を示す例です。

 

法廷では、相手となった人物の証人尋問をしました。私は、被告人の主張する事実通りに反対尋問をしました。周りからじわじわと核心に触れていきました。すると、彼の口から被告人が言うとおりの人物が出たのです。証言は、かなり具体的でした。信憑性がありました。裁判官も、かなりの補充尋問をし、私の反証は見事に成功しました。被告人が犯行した可能性は認めがたいのです。
その後、審理は、この後1年あまりも続きました。検察側の補充立証が相次いだのです。私も裁判官も、後出しの証拠や証言の証拠価値に疑問を持っていました。私は異議を連発しました。ところが、そうこうするうちに担当裁判官が転勤で交代したのです。後任の裁判官は、若く、無罪判決など書いたことはなかったのでしょう。また、先の決定的な証言は聞いていないのです。証言の信用性は、直接、法廷でその証言態度にふれなければ心証はとれません。ところが、交代後の裁判官は、証言に立ち会っていないのです。彼は、消極的でした。
判決は有罪でした。ただ、刑は軽く、未決日数を算入すると数ヶ月服役すれば足りるものでした。つまり、控訴すると、むしろ拘留期間が長くなるのです。私は、なんということだと思いました。被告人は、残念がっていましたが、私に感謝し、控訴はしませんでした。しかし、その後も彼はえん罪に納得できなかったのでしょう。服役後も私の事務所に電話がかかってきたことがありましたが、まもなく、奥さんからなくなったとの連絡がありました。
今から思えば、私の弁護が足りなかったのでしょう。無罪をとるための押しが足りなかったのかもしれません。しかし、長い審理、裁判官のキャリアシステムは、間違っています。裁判員裁判ですと、集中して証拠調べをしますので、おそらく、あの証言の瞬間で勝負はついたでしょう。刑事裁判は、直接主義でないとだめだと実感しました。

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